くすりの村源

風邪薬の説明書に、「緑内障の方は相談すること」と書いてますが?

緑内障の種類によっては服用することができる場合と、できない場合があります。

緑内障は、視神経が障害を受け、見える範囲つまり視野が狭くなっていく病気で、主な原因は眼球にかかる圧力が高くなって視神経を圧迫することです。
眼球にかかる圧力のことを眼圧といいますが、風邪薬に入っている成分の働きで眼圧が高くなることがあるのです。これには、自律神経が関係しています。
自律神経には交感神経と副交感神経があります。例えば、黒目の真中に見える黒い丸は、瞳孔というもので、いわば映像を取り入れるための窓ですが、交感神経は、周りにある虹彩という扉を外向きに引っ張って瞳孔を大きくし、副交感神経は虹彩を内向きに引っ張って瞳孔を小さくします。
眼圧は、目の中でつくられて角膜や水晶体に栄養を補給している房水という液体の量が多くなると高くなります。房水は、黒目のふち側の、虹彩の後ろ側でつくられ、内向きに流れ、瞳孔を通って前へ出てから外向きに流れ、虹彩と角膜の間の隅角という所を通って眼球の外へ出て行きます。
副交感神経の働きが抑えられると、瞳孔が大きくなるため、房水が前向きに勢いよく流れて、虹彩を押します。すると、隅角が狭くなり、房水が外へ出て行きにくくなって、眼圧が高くなります。
交感神経の場合、瞳孔を大きくする他に、房水をつくる量を加減したり、隅角の次に房水が通る所を広げたりする働きがあるため、眼圧への影響は複雑ですが、交感神経の働きが強くなった場合も、隅角が極端に狭くなると、眼圧が高くなることがあります。
風邪薬の成分のうち、咳を鎮めるクエン酸ペントキシベリンや、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどのアレルギー症状を抑えるマレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸カルビノキサミン、塩酸ジフェンヒドラミン、フマル酸クレマスチン、メキタジン、塩酸ジフェニルピラリンなどは副交感神経の働きを抑えます。また、気管支を広げて呼吸を楽にするエフェドリンは交感神経の働きを強くします。
副交感神経遮断薬(ロートエキスなど)や交感神経刺激薬(咳止め類)にも注意が必要です。
特に注意が必要なのは、もともと隅角が狭い人です。もともと狭い房水の出口がよけい狭くなり、殆ど閉じてしまうため、眼圧が急激に高くなり、急性閉塞隅角緑内障の発作を起こす危険があります。
急性閉塞隅角緑内障になると、急に目が痛くなり、角膜が膨らんだり、充血したり、物が見辛くなったりします。同時に頭痛や吐き気、腹痛、腰痛が起こるため、内科や整形外科を受診してしまうことがあるそうですが、処置が遅れると短期間で失明してしまう恐れがあります。
なお、隅角が狭くない方(開放隅角緑内障)や、レーザー手術などで房水の流出路を確保する治療を受けている方、瞳孔を小さくする点眼薬を使用している方の服薬は可能です。

 

【結論】 閉塞隅角緑内障で、まだ手術をしていない方は「前立腺肥大症の方の風邪薬」と同じ注意をしましょう。

次回のチラシ掲載日までお待ちください(毎月24日)